一般にこの物理的・線量的なコミッショニングはリニアック設置後にユーザー単独で3ヶ月 ~ 半年程度の時間を掛けて実施します.
強度変調放射線治療や定位放射線治療のような高精度放射線治療を臨床実施するためには更なるコミッショニング期間を要することになります.
このリニアック設置から治療開始までのフェーズで、最終的に投与する患者様への線量分布の品質を保証するためには、物理的・線量的なコミッショニングのみならず、より臨床的なコミッショニングにも時間を使えるようにすることがとても大切です.
しかし現実的には、物理的・線量的なコミッショニングが多忙を極め、臨床的なコミッショニングなどには十分に手が回らないまま治療開始を迎えてしまうことが問題としてあげられます.
さらにこのコミッショニングでは膨大な検証項目とパラメータ決定があり、それらにおけるミスは医療事故に直結し得るため細心の注意と十分な検証が求められます。放射線計測は様々な不確かさの中での計測であり、結果としてコミッショニング担当者は大きな不安を抱えながら作業を進めることになってしまいます.
またリニアック新規導入はおよそ10年に1回の機会ですので、若手教育としての側面も重要となりますが、この多忙なコミッショニング期間に教育的時間にも十分な労力を割くことは現実的に非常に難しく、機会損失にもなってしまいます.
RapidComをご活用いただくことで包括的かつハイボリュームな物理的・線量的なコミッショニングを短期間(最短10日間)で実施いただくことが可能です。
効率的に物理的・線量的なコミッショニングが実施できることで、臨床的なコミッショニングや治療開始準備の時間を十分に確保して、安全かつ高品質な治療開始を迎えられるようになります。
さらに1つ1つの結果を毎日一緒にしっかりとレビュー・ディスカッションすることにも注力しています。多施設データベースとの比較も含むことによって、一般に問題となるコミッショニングにおける不安を大幅に解消します。
また線量計測・線量検証・ビームデータなどについてガイドライン・研究論文等のレビューとなる講習会も同時に開催しています。実務的にも座学的にも若手教育へも貢献できるシステムとなっています。
リニアック設置から治療開始までのフェーズで、最も時間と労力のかかる物理コミッショニングが、安心・安全・高精度に、効率化されることは多くのベネフィットをもたらします.
1つは臨床的コミッショニング期間をしっかりと確保できることにより、新システムでの治療開始を安心して、自信をもって、万全の準備をした上で患者様を迎えられることです.
もう1つは診療停止期間の最短化です.治療開始を早められ、1人目の患者様から高精度治療を実施可能なことは、遅滞なく患者様へより高品質な放射線治療を届けることに寄与し、診療報酬の面でも大きな違いになります.
また施設単独ではなく、第三者と協力してコミッショニングを行うことは様々な視点で1つ1つの検証を深く多角的に進めることが可能になるなど、医療安全の観点でも高い評価をいただいております.
Beam Data
Acquisition
RapidCom独自のゴールデンビームデータセットと施設ビームデータを比較し、最も一致するビームデータセットをインストール.
本取得方法は研究結果(Med Phys 2020 47,11)に基づきRapidComが独自に構築した短期化と線量計算精度の担保を両立するためのビームデータ取得方法です.
ご施設の方による通常のフルビームデータ測定.
RapidComに加えてBeamScanを導入いただくと全ての項目を測定しても1週間+α程度で完了します.
品質と経験的要素として1-2線質くらい測りたいというご要望も多いので、その場合はMethod 1と測定のHybridプランも相談しながら提案しています.
Linac
QA
ガイドラインに準拠したQA項目に加え、ご施設のQAベースライン項目のQAを一緒に実施します.
MLC Fence試験やWinston-Lutz試験など画像解析が必要なQA項目は独自の解析プログラムを用意しており、多施設との傾向の違いも含めて高精度かつ柔軟に解析結果をレポートします.
Planning
System
・主要パラメータの多施設比較
・3D-CRT点線量検証(90 beams / 1 energy)
・3D-CRT線量分布検証
・End-to-End試験
・線量計算アルゴリズム毎の不均質補正 など
IMRT VMAT
SRS
タイトな許容値設定で包括的かつハイボリュームなIMRT・VMATコミッショニングをサポート.
検証方法・パラメータ検討なども含めて2日間でスムーズに実施可能.
・電離箱線量計を用いた点線量検証(許容値:< ±2%)
・Delta4を用いた線量分布検証(許容値:γ(2%/2mm)パス率 > 95% )
コミッショニング結果からSingle Isocenter SRS-VMATの最適な線量計算条件をディスカッション・検討していきます.
Other
Contents
・電子線Monte Carloのコミッショニング
フルモンテカルロシミュレーションを用いたTPS搭載の電子線Monte Carloアルゴリズムのコミッショニング.
・出力線量の第三者評価(第三者評価機関未認定)
固体ファントムを用いた訪問による出力線量の第三者評価.(JJMP 2020 40,3)
X線標準条件:許容値 ±1%
電子線標準条件:許容値 ±3%
Support
Policy
コミッショニングは一言で言うと臨床開始前試験です.
施設毎に診療内容・新たに導入する新技術・人員配置などは様々です。そのため「臨床開始前に行う最適な試験」は施設毎に様々です.例えリニアックや計画装置が同一なものであっても最適なコミッショニングおよびその最適なサポートは施設毎に様々です.
私たちはこの施設毎の最適なコミッショニングの多様性はリニアック機種の違いや個体差よりも遥かに大きいものであると考えています.そのためユーザーとの打合せ・ディスカッションを通じて可能な限りその施設に最適なサポートを提供できるよう心掛けています.
コミッショニングの本質は計測でもビームデータでもなく、新たにインストールされたシステムで安全により高品質な放射線治療を患者様へ提供できるようにするため、ご施設の方が様々な「新しいスタンダード」を築いていくことだと考えています。安心・安全・高精度に、効率的に物理的・線量的なコミッショニングを協働実施するだけでなく、ご施設の方が施設の「新しいスタンダード」を構築するための一助となれるように努めています.
ご施設で様々なテーマでの講習会を開催します.
ご施設内だけで実施するオンサイトセミナーは質疑・ディスカッションがとても活発になります.
Programs.
「ビームデータ」「線量計算アルゴリズム」「コミッショニング概論」
「リニアックQA」「IMRT線量検証」「IMRT治療計画」など
RapidComユーザー専用ページからアクセスできるオンデマンド配信セミナー.
軽い気持ちで見られる1回15分程度の解説動画.
RapidComユーザーが参加・オンデマンド聴講できる月に1回のWebinar.
’22年度は「治療計画の品質保証プロセス・プランチェック」を年間テーマに実施.
Name.
谷 謙甫 / Kensuke Tani
Qualification.
医学物理士
Academic Background.
首都大学東京 学士(工学)
首都大学東京大学院 修士・博士(放射線学)
Work Background.
聖路加国際病院 医学物理士
Main Research Works.
[Med Phys 2020. Editor's Choice.] Evaluation of differences and dosimetric influences of beam models using golden and multi-institutional measured beam datasets in radiation treatment planning systems.
[JJMP 2020.] 固体ファントムを用いた訪問による出力線量の第三者評価プログラムの構築.
[JACMP 2018.] Density scaling of phantom materials for a 3D dose verification system.
[JSRT 2018-教育講演.] 医療用加速器のビームデータ取得と治療計画装置モデリング.
Favorite.
ビール、ウィスキー、プレミアリーグなど
Name.
脇田 明尚 / Akihisa Wakita
Qualification.
医学物理士
Academic Background.
京都大学 学士(理学)
京都大学大学院 修士(理学)
Work Background.
国立がん研究センター中央病院 医学物理士
Main Research Works.
[JJMP 2013.] (翻訳) 医療用加速器におけるコミッショニングの機器と手順 ―米国医学物理学会・治療物理委員会タスクグループ106レポート―.
[共著] 詳説 放射線治療の精度管理と測定技術―高精度放射線治療に対応した実践Q&A-. 中外医学社, 2012.
[2018-20JASTRO課題研究 代表者] 強度変調放射線治療の質的評価基盤の確立.
Favorite.
クラシックギター、自作キーボードなど